SSブログ

EMG PJ set [楽器]

長年、弟のとこにいってたB.C.Richのモッキンバード・ベースが帰ってきた。このモッキンはボルトオン・ネックの廉価版で学生時分に購入しEMGのピックアップに交換した物だ。グレコ・レスカス同様、写真の現像もやる弟の生活環境の中に置いてあったので金属パーツ類のメッキに剥がれが発生していた。塗装のクリア層も若干曇っている。弦交換ついでにアッセンブリーをチェックしてみた。

IMG_3236.JPG
↑ポールピース無しのマットブラックの見た目がいかにもEMG

【B.C.Rich モッキンバード・ベース】
まずはベースの紹介。

IMG_3235.JPG

メタルバンドで使用することを主目的に見た目が気に入り手に入れた1本。攻撃的なデザインが特徴のB.C.Richの中では比較的無難なデザインでほんのり攻撃的なとこが長所。木材の色を活かしたウッディーなナチュラル・フィニッシュがまた良い。だが、サンダーバードをアレンジしたと思われるボディ形状のためかバランスは悪くヘッド落ちが激しい「ヘッド落ち王」である(「モッキンバード」は「物真似鳥(和名:マネシツグミ)」の意である。サンダーバードの物真似なのでモッキンバードってことかな?)。ギターのモッキンバードですらヘッド落ちの話がよく出るが、ネックが長いベースなので尚更である。座って弾く分には問題ないんだが、ストラップ位置の関係で立って弾くとローポジがフェンダー系のベースより遠くなる。長めのストラップにしてネックをやや縦気味に構えて弾けばいいのかもしれない。

廉価版ではないモッキンバード・ベースはスルーネックでPピックアップx2に多彩な音色を作れるアクティブ・コントロールを搭載していたが、この廉価版ではボルトオン・ネックでパッシブのPJピックアップにシンプルな2volume、1toneにPU切り替え用トグル・スイッチというフルパッシブ構成。コントロール類はフライングV、エクスプローラー、サンダーバードあたりと似た感じだろう。通常版のモッキンは高価だったので普及用スチューデント・モデルとして企画された商品なのかな。

指板はエボニー(黒檀)に見えるが実は「フェノリック」という合成樹脂なのだ。エボニー代替用に選定された化学合成素材なのだろう。スタインバーガーの指板なんかにも使われている。なかなか硬い素材でフレットレスに好適だそうな。ジャコのフレットレスのジャズベがローズ指板をエポキシでコーティングされていたのを思い出すね。他にもローズ材を樹脂含浸し硬くした材もあるそうなんだけどウチのモッキンの指板はどっちなんだろ。よくよく見ると柾目的なな筋が見えるので樹脂含浸かなとも思ったが、あまりにもその目が左右対称で規則的なので、積層フェノリック樹脂材を指板アールが出るように研磨した際に出た積層材の接着面なのかもしれない。

【アクティブPJベース万歳時代】
このベースのピックアップをアクティブ型リプレイスメント・ピックアップで人気だったEMGに交換したのも学生当時。今は音屋でこなれた価格で買えるけど当時は高かったように思う。それこそ初中級者向けベースが1本買えるくらいだったかと。当時はマーカス・ミラーのアクティブ・ジャズベとかスタンリー・クラークのアレンビックとかアクティブ回路搭載のベースが大人気で、自作バッファーを積んでベースをローインピ化して音痩せ防止なんてのも流行ったりしたのだ。

ちなみに現在所有しているベースは3本ともアクティブPUかプリアンプ内蔵のアクティブ物ばかりだ。アクティブ万歳時代にバンドをやっていたせいだね。ベーマガを毎号買って情報収集してたしね。今はアクティブ臭い音以外にも興味があるので良いパッシブ物も欲しいけど。まぁバンドで使う分にはアクティブはコントロール幅が広いので対応性が高く無難な選択だとは思うけどね。

また「PJ」というピックアップ構成は「P」の図太い音にリア「J」の癖のない高音主体の音をブレンドすることでJBのようにサウンドバリエーションを増やした使用幅の広い新しいベース・ピックアップ構成として当時は流行りだった。ヤマハのBB(桜井哲夫、ネイザン・イースト、ビリー・シーンなど使用者多数)、フェルナンデスのFRB(初心者用ベースとして馬鹿売れ。上位機種はプロも使用)なんかがPJ構成だった。ジャクソンのディンキー・ボディのベースもPJだった。フェンダーもPJ構成のモデルをPのモダン版として追加した。スペクター、ワーウィックのヒット作もPJだった。

フェンダーのプレベに搭載されているパッシブの「P」ピックアップは高音弦側と低音減側の2つに分割されたコイル(よってスプリット・コイルと呼ばれる)をミックスしてハムキャンセルさせるようになっている。一方、フェンダーのジャズベに搭載されているパッシブのリアの「J」ピックアップは単体ではハムキャンセルはできない。ジャズベはフロントとリアの「J」ピックアップをミックスしてハムキャンセル効果を得られるように設計されている(これは当時ギブソンのハムバッカーピックアップ「PAF」の特許侵害を回避するためだったようだ)。もちろん単体でハムキャンセルできるJタイプも今は作られているが、昔のパッシブのPJではリアのみ使用は考えにくい(ジャコはジャズベのリア寄りの音色が特徴だったけどね)。Pの音にJ要素を付加するのがPJ構成のリアJの役割であり「P:主」「J:従」関係だと思っていた。もちろんアクティブタイプやパッシブ+ノイズゲートを使う場合は問題なくリアのみも使える。むしろPJを「Pのみ」と「リアJのみ」の2Wayでしか使わないという人もいる。

んで、このEMG PJ setはスペクターの人気モデル「NS」シリーズ(NS-2が特に人気。スティング他多くのミュージシャンに使われた)に標準搭載されていた。「スペクター」はステュアート・スペクターが設立した工房で「スタインバーガー」ブランドを立ち上げる前のネッド・スタインバーガーがデザインしたNSシリーズがヒットし人気ブランドになった。このNSがカッコ良くてね〜。ジャンルを問わず使われてたイメージがあるがメタル・バンドにもハマるルックスなのだ。メタルの権家Judas Priestのイアン・ヒルが愛用。PanteraのレックスもNSじゃないがスペクター製シグネイチャーモデルを使っている。

他にもフェルナンデスのFRBの上位機種にもEMG PJ setが使われていたような気がする。EMGピックアップはギターではリー・リトナー、スティーヴ・ルカサー、デヴィッド・ギルモア、メタリカ、ザック・ワイルドなどが使用した。エフェクター乗りが良くノイズレスで安定した出音が得られる特徴からプロやスタジオ・ミュージシャン御用達ブランドというイメージだった。なもんでベースでEMGピックアップでPJ構成と言えば当時のトレンドの典型の1つと言って良いだろう。

そんなトレンドのピックアップを見た目がゴツいベースに積むというのがワシの当時のコンセプトだったが、出音が至って普通、逆に言えば特別「ならでは」の音がするわけでもないベースが出来上がった。ヘッド落ち癖があるため左手で支えながらフィンガリングするという操作性の悪さで動き回るパッセージは弾けない。ルートを刻む系ならなんとかって感じ。ちゅうわけでお金をかけた割に出番は減り、ある日、弟がベースを貸してというので一番出番が無かったこいつを貸し出したのであった。

【物真似鳥の帰還】
で、弟のとこから久しぶりに帰ってきたモッキンを調整し普通に使えるようにしようと思い掃除を始めた。曇ったボディとヘッドやメッキがかけ始めた金属パーツ類をクロスで磨いた。ネックが順反っていたのでロッドをちょっと締めた。弦も錆び錆びなのでダダリオのニッケル・ラウンド弦(定番中の定番)に交換。更に電池も交換しようと裏蓋をあけた。んでサーキットを見てみたらポット類が元の250kΩだった。当時メタルノブを引き抜けなくてサーキットそのままでピックアップとジャックを交換し電池ボックスを追加しただけだったんだな。

これでは設計通りの音が出るとは言えないだろう。25kΩのポット類に変えれば音が太くなるかもしれない。グレコ・レスポのポット交換の経験ではポットの抵抗値が増えると音がハイ寄りになる。逆に言えばポットの抵抗値が小さくなると高域側にフィルターがかかるようになる。250kΩから25kΩに変更すれば音の中心が低域に寄り図太いプレベ風な音になるんではないかと期待。

【パーツ交換】
IMG_3207.JPG
んでEMG対応のミリシャフトの25kΩポット(Aカーブしか売ってなかったのでAカーブ品)3個と「主にアクティブPU用」を謳うディマジオのコンデンサーを入手。このコンデンサーの容量表記が「.100mF」なんだよね。0.1μFじゃないの?ディマジオのパッシブ・ピックアップ用のコンデンサーの容量表記も「.022mF」だったり「.047mF」だったりするんで、ディマジオではmicroの頭を取ってmと表記してるんでしょう。うん。きっとそうに違いない。

IMG_3219.JPG
で、パーツ交換した。今はいろいろな工具を持っているので昔諦めたノブをあっさり外せた。これで古いサーキットを取り外せる。次は新しいパーツで配線だ。モッキンに積んだEMG-PJは昔の物なんでソケット化されていないハンダ付けして使う仕様の物だ。最近のEMGはアッセンブリーがソケット化されてるのでオフィシャル・ページの配線説明図が役に立たない。んでネットを漁ったら昔のEMG-PJの配線図(トグルスイッチ無し)やエクスプローラー用のEMG配線図(トグルスイッチあり)を見つけたのでそれらを参考に回路を接続した。電池用の配線やピックアップからの配線なんかを上にどけてセロテープでベース背面に固定しながら作業。写真ではピックアップ配線も完了している。

IMG_3220.JPG
おそらく廉価版ではないモッキンバードのザグりと同じサイズのザグりなので作業が容易。アクティブ・コントロールが入るであろう空間がゴッソリ空いているのでそこに電池ボックスをネジ留め。電池ボックスは模型屋で購入した物だ。

IMG_3221.JPG
さらにピックアップ固定ネジが錆び錆びで舐めそうになっていたので新品のネジに交換。金色なせいかちょっと高い。

IMG_3227.JPG
アトリエZ改ジャズベのピックアップ用スポンジが潰れていたのでモッキンもそうなっているに違いないと思い「P用」と「J用」のスポンジも購入しておいた。んでスポンジを交換しようとピックアップ固定ネジを緩めてピックアップを外して見てみたら、そもそもスポンジが無い。B.C.Rich全般がそうなのかは知らないが、このベースはネジのとこにリングというか短いマカロニというか筒状のゴムがあって、そのゴムの弾力でピックアップの高さを調整&保持できるようになってるのだ。せっかく買ったんだしスペースも空いてるからスポンジは使った。別に悪さするわけはないだろうしね。

【回路変更モッキンの出音チェック】
まず弦交換を先にやって出音を確認してからサーキットを交換し再び出音をチェックした。サーキット交換後の出音の印象はサーキット交換前とあんま変わらない。あれあれ?予想では重心が下がって野太くなるはずなのに。ピックアップ内のバッファーでローインピ化されてるんで、その後の回路の影響を受けにくいのかな。それとも使ってるアンプのせいかな(んなこたぁ無いとは思うが)。ハイが伸びる癖の無い優等生的な出音がEMGらしいっちゃあらしいんだが、PJのPにした時に特別ブリっとした音にならないのが不満っちゃあ不満。EMGの長所でありかつ短所なのかな。

更にアンシミュでEMG-PJモッキンの音をいじってみた。音源に合わせて弾いてみるとけっこうハマる。単品では「?」だがアンサンブルには馴染みやすいという典型か。でもちょっと好みと違うんだよな〜とアンプのつまみをいろいろイジる。元が素直なので追従性が良く出音が変わる変わる。

①フロント+リア:JJですか?ってくらいP要素を感じない。これならJBでいいじゃんって感じ。ただしリアボリュームを絞ればJJとは少し違ってくる(ような気がする)。
②リア(Jのみ):ジャコw でも高域成分多めな感じ。
③フロント(Pのみ):弾く位置にシビアでいやな高音が混じることがある。

で、フロント(Pのみ)状態でアンプのつまみをいじってPセッティングに挑戦。
③-1 HIGH&LOW上げ(相対的MID下げ):いわゆるドンシャリ。いやなパコパコ感が減り好みの傾向になるがジャズベでドンシャリしてるのとあんま変わらん。
③-2 MID上げ:弾く位置にシビアになる。上手く弾けるといい感じ。
③-3 GAINちょい上げ:太さが出ていい感じ。いやな高音が潰される?

アンプセッティング(ちゅうてもシミュだが)で千変万化して面白いが壷を外すといきなり情けないパコパコした音になるのが難。JJ構成のベースと差別化を図りつつ使える音を安定的に出すにはやはりプリかEQが必要かもね。狙った「P」の音にはならなかったが、美味しいセッティングが見つかればEMG-Pならではの音を出せるようになるかもしれない。

どうもベース用EMGは「うりゃうりゃ。俺の音を聞きやがれ」系ではなく「でしゃばらずにしっかり低音域を埋めさせてもらいます」系な感じ。キレイ系の代表とされるバルトリーニですらEMGよりは中域豊かという話も。EMGってプリ入りJJが一番「らしい」のかもしんないな〜ちょっと思った。

【PじゃないP】
EMG-PJに関してググってみたらEMGのPは直列接続でなく並列接続だという記載があった。そうであるならEMG-Pの出音のパコパコ感(←Hi-MID帯の音らしい)とか期待してた程は出てないボトムとかの原因が分かったような気がする。見た目が同じでも中でやってる事は違う事があるんだな。

プレベにサウンドバリエーションを持たせようとスプリット・ピックアップの直列接続と並列接続を切り替えるスイッチを増設する改造があるそうな。直列接続=ハムバッカー、並列接続=ジャズベの前後フルアップ、と考えればいい。直列接続では中低域が増強され高域が削がれ超高域は無くなり全体的にはパワーアップでハムノイズの低減効果が大きい。並列接続では逆に高域が強調される。ストラトのフロント&ミドルのハーフトーンのあれですよ。中低域は弱まる。ハムキャンセル効果はあるが直列接続の方が効果は高い。ジャズベで直列接続にする改造をするとハムバッカー状態になり野太くなるそうだ。アメデラ・ストラトのS-1スイッチONと同じ状態だね。で、プレベの並列改造の音はと言えば、確かにキャラクターが違う音が出るのだが、それが使える音かというと微妙らしい。使える音なら流行ってるはずだもんね。

Hi-Fi系を目指したのかEMG-Pは王道プレベとは異なる結線をすることで高域を伸ばしたって事ですな。そもそも低音弦と高音弦でコイルが分割されているのでジャズベやストラトの並列接続とまったく同じにはならないとは思うし、「フロント・ポジションにマウントされている」し「アクティブタイプ独特の巻き数の少ないワイヤリングと補強用バッファー回路で低域痩せにならないように設計されている」ので出音に問題は無いけど、「純粋なプレベのアクティブ化ではない!」って事ですよ。なんだよ〜。1、2弦用と3、4弦用のコイルが別になってるJB用ピックアップ(バルトリーニ9Jとか)の親類じゃないかね。だとしたらウチにはアクティブJJのベースしかないようなもんだな。直列並列をディップスイッチで切り替えられたら良かったのに。でもそうしたらバッファー回路もそれぞれ用に必要だったのかもしれないし、直列接続では使い物になる音が(少なくとも当時は)得られなかったのかもしれない。まぁなんにしても拍子抜けだ。

実はJJに近かろうが出音がPらしくなかろうが出音はフラットで素直な感じなのでプリアンプやEQでいくらでも音作りができそうではある。キャビティーに余裕はあるしプリアンプ追加してブリブリセッティングを目指すのもいいし、サンズ等のフロアタイプ・プリやEQでブリブリさせる余地はあるんだから救いはあるんだがな〜。手に入れて20年以上経ってからそんな事を知るとは。いや、ほんと不勉強だったな、ワシ。と、ちょっと自戒。そもそもパッシブ用ポットで使ってたくらい適当人間なんですがね。

※本記事はTwitterでつぶやいたネタをまとめて更にまとめながら思い付いた記述を増やしたものです。元ネタがあったから簡単にできるかと思ったら、それなりに時間がかかり、かかった時間相応の長文になってしまいました。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。